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家庭が崩壊していた地元のヤマダくん

 

久しぶりに地元の広島へ帰郷したら小学校~高校時代の同級生であったヤマダくんに出会う。

 

 

場所は広島で最も栄えている街、紙屋町の本通りだ。高校を卒業してから一度も顔を合わせていないのでお互い積もる話もあろう、俺達は自ずとメインストリートに面した「ドトール・コーヒー」へと足を運ぶ。そこでヤマダくんは現在の自分の置かれている状況をツラツラと語り始めたのだった。

 

話を聞けばどうもヤマダくんの家庭は崩壊しつつある風であった。

 

ヤマダくんの家族は彼と弟と兄貴と母親の合わせて4人家族であるが兄と弟はニートで働いておらず、母親はパチンコ狂らしい。それも超重度の。

 

毎日「海物語」を打ちにヤマダくんが稼いでいるなけなしの金を持っては今日も明日も電子制御で胴元が儲かるよう設定されたパチンコ台へと金を吸い上げられているそうな。しかもそれだけでは飽き足らず、消費者金融や闇金チックなところからも金を借りてまでパチンコを打つ根っからのギャンブルジャンキーらしい。

 

兄貴も弟も働く気の一切無いパーフェクトニートであるため彼等の収入はこれから先もあてにできない、そんな中でヤマダくんは自分が働き得ている少ない給料の中から母親の借金の利息分だけを返すという生活をかれこれ5年程続けているのだという。もちろん元本は減らないから完済なんかできるはずがないし、そもそも月々の利息すら満足に返済できていない。そんなヤマダくんの家には2018年のこのご時世に昔のドラマで見た様なチンピラまがいの借金取りが度々家へとやってくるらしい。

 

そんなヤマダ一家が陥ってる絶望的な現状を聞いて俺はヘラヘラ笑っていた、単純に彼等が陥っている状況がおもしろかったからだ。ヤマダくんはそんな俺を見てブチ切れた。

 

俺は根っこの部分がとてつもなく楽観主義の人間である。26歳で既に6つの会社を退職しキャリアは既にボロボロであるが常に「人生なんか余裕」と思っているのだ。そんな俺が己のフィルターを通して見るならば、ヤマダくんの陥っている現状というのはそれほど絶望的でもなく、365日いつでも脱出可能なイージーなものに見えるのである。

 

東京で何不自由のない家庭に育ち誰かが決めたレール通りの人生を歩んでいるようなヤツにとってはこの様な光景は珍しく、とてもイビツで絶望的な状況に陥っている様な気がするかもしれない、だが、こと広島という田舎ではこういうヤツはほんとに多い。

 

いつまでもバイトでタラタラしてるヤツ、毎日遊びほうけてプラプラしてるヤツ、ニートなのになんとなく子供作るやつ、犯罪を犯して刑務所に入れられるヤツ。

 

風の噂で聞く過去の同級生の現況はおおかたこんなものである。

 

ヤマダくんも例外なくその様な連中がのさばる環境で育ってきた人間だ。

 

そんな俺と同じ社会を経験してきたヤマダくんからすれば自分の陥っているこのような境遇も別にこれといって珍しくもなければ危機的状況にもない至って些細で些末なモノであり、もっとポジティブに捉えられそうなものであるが、どうもそういう風にはならない様子であった。

 

ヤマダくんは自分を取り巻く環境の悪さ、そして己の人生のコントロール不能さで頭がいっぱいになっていた。

 

こんな状況は考え方の転換ひとつでいくらでも挽回可能な事柄である。

 

しかしヤマダくんにはそれが出来ない。「こうしなければならない」という思考の檻に捉われているヤマダくんにはその様な発想を導き出す事ができないのである。

 

悪いのはいつまでもニートな兄貴や弟ではなく、ましてやパチンコ狂いのお母さんでもない。このヤマダくん一家の脳内に巣食う、凝り固まった思考のループ、ネガティブシンキングこそがいつまでも彼等をこの様な現状に閉じ込めている元凶なのだ。

 

そんなヤマダくんに俺が出来る事といえば資金的援助でもなけば自己破産手続きを勧めるワケでもない。ただ彼の現状をナチュラルに笑うだけだ。

 

何故ならこれは彼が自分の頭で考えた上でどうにかする彼自身の問題だと思っているからである。ヤマダくん自身が奮起し現状を変えようとせず、他者のお布施や助言等で一時的に窮地を脱したところでヤマダくん自身が奮起し現状を変えようとし、必要な知識をつけ問題に立ち向かっていかない限り必ず元の木阿弥に戻り堂々巡りになる事を俺は知っているからである。

 

彼が自ら陥っている思考のループから脱出しない限り、これからヤマダくんを取り巻く環境はどんどん悪くなっていくことだろう、しかし俺にはどうする事も出来ない、俺にはどうする事も出来ないのである。

 

俺は切れているヤマダくんを尻目に残っているアイスコーヒーを飲む。

 

もうここに俺の知っていた頃のヤマダくんは存在しない。目の前にあるのは脳髄までネガティブに支配されたただの屍だ。

 

俺はコーヒーを飲み干すとキレているヤマダくんのカタチをした何かに別れを告げ店を出る。道中うかんでくるのはいつも楽しかったヤマダくんとの思い出ばかりであった。

 

俺はそんな元気であった頃のヤマダくんとの思い出を抱えながら静かに東京行の新幹線へと乗り込むのであった。

 

日記
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